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戦前の朝鮮流行歌レコード

 『아르렁』(アリラン=映画小唄)


(ビクター49071/金蓮實)   

SPレコード

日本語で歌われた第1号の「アリラン」のレコードは、日本ビクターの昭和6年7月新譜『アリラン』(51819、西條八十作詩、ビクター文芸部編曲、金色仮面歌唱)でした。

それに先立つ前年の昭和5年、同じ日本ビクターから朝鮮譜(朝鮮語レコード)で『아리랑(アリラン)』(49071)が発売されています。歌唱者は金蓮實という女性歌手です。

レコードに針を落とすと、木琴とピアノによる前奏に続いて、「アリラン アリラン アラリヨー アリラン コゲロ ノモガンダ~」という、お馴染みの朝鮮語が聴こえてきます。それは民謡というより童謡のような感じで、歌唱も幼い子供のような女性の声。現代の我々が「アリラン」に抱く「哀調」のイメージとは違う印象がしました。

一方、日本語の翻案歌謡である『アリラン』(金色仮面)はというと、『아리랑』(金蓮實)に比べるとメロディがスローテンポでワルツ風になっているものの、同じ木琴を伴奏の楽器に使っています。また、声楽畑出身の覆面歌手・金色仮面(ゴールデンマスク)こと小林千代子の歌唱も、金蓮實の幼い感じの歌い方を意識しているようにも思えます。

SPレコード 歌唱者の金蓮實については、朴燦鎬氏の『韓国歌謡史1895-1945』によりますと、1911年(明治44年)平壌生まれで、平壌女子普通学校出身。映画『さらば』デビューした俳優とあり、「美声を見込まれてレコード歌手にもなる。端正な容姿で人気があり、30年(昭和5年)3月にビクターから『暗路』を出している」(同書154頁)としています。実は『暗路』という曲は、この『아리랑』のレコード片面(B面)に収録されている映画小唄のタイトルなのです。

『아리랑』のレーベルには、編曲者と作詞者名の記載がなく、独唱・金蓮實と、伴奏・日本ビクター楽団(「ビクター」はハングル文字)とあります。私はこのビクター朝鮮盤こそ、『アリラン』(金色仮面)盤の原曲だと推察しています。

レコードレーベルの曲タイトル上部には、映画小唄という表記があります。映画小唄は、昭和初期によく用いられていた映画主題歌の表記です。その映画とは、初期朝鮮映画『アリラン』(羅雲奎監督・主演、1926年)であることは言うまでもありません。

なお、「アリラン」という歌謡自体は、明治時代に日本で録音しアメリカ・コロムビアでプレスされた出張録音盤目録の中に、朝鮮の雑歌『アラランターリョン』(「アリラン打令」)という曲名が記載されていることを付記しておきます。

雑歌とは、俚謡や民謡という日本語がまだ普及していない頃、朝鮮で民謡に相当する曲を収録したレコードの表記に用いられていました(例=『南道雑歌』など)。

ふろあ

(平成25年4月14日稿)


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