内地ヒット流行歌の朝鮮語によるカバー曲で、当時、テイチクレコードの朝鮮現地レーベルのオーケーレコードで発売の音盤です。『處女日記』のオリジナル曲は、テイチクの昭和12年3月新譜『青春日記』です。
『青春日記』の作編曲は古賀政男、作詩は佐藤惣之助です。古賀と佐藤は、日本コロムビアの『アリランの唄』(昭和7年、別項で紹介)のコンビです。
古賀政男は、昭和9年にコロムビアからテイチクに重役待遇で移籍しており、『二人は若い』『緑の地平線』(昭和10年)、『東京ラプソディ』『あゝそれなのに』(同11年)、『人生の並木道』『青い背広で』(同12年)など、作る曲が次々とヒットを重ねる大躍進ぶりでした。『青春日記』は『青い背広で』のB面曲で、ともに歌唱は藤山一郎です。古賀本人のギター伴奏によるセンチメンタルなエレジーで、失恋の痛手をうたった内容です。
朝鮮語カバー曲の『處女日記』のほうは、レーベルには作詩が朴英鎬、編曲が朴是春とだけあって、原曲の作曲者である古賀政男の名前は記載されていません。
朴是春は、名曲『哀愁の小夜曲』(オーケーのレーベル表記では『哀愁之小夜曲』=別項で紹介)の作曲者ですが、古賀政男のギター楽曲の影響を強く受け、日本の敗戦前まで孫朴人、金海松とともにオーケーレコードの主力作曲家として活躍した人です。
彼はギター演奏を得意としていて、『處女日記』では編曲のほかギター伴奏も担当しています。『處女日記』の伴奏を聴くと、「韓国の古賀政男」という朴の異名も、なるほどなぁと納得できます。
歌唱者は、宋達協という昭和12年頃にオーケーレコードで活躍した男性歌手。当時の日本人歌手で例えると、タイヘイや日本ポリドールで活躍した北廉太郎(紀多寛)のような、甘い感じの美声です。
(平成24年10月28日稿)
ふろあ
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