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戦前の朝鮮流行歌レコード

『哀愁以小夜曲』


(オーケー12080/南仁樹) 

SPレコード

南仁樹の代表曲の一つに『哀愁の小夜曲』があります。現在の韓国における大衆歌謡の定型的な曲とされ、今日でも懐メロとして歌い継がれているようです。

古賀政男作曲の『 酒は涙か溜息か』(日本コロムビア発売、オリジナル歌唱=藤山一郎、朝鮮語歌唱=蔡奎燁)とよく似た、ギターの爪弾きを入れたエレジー歌謡です。オーケー専属だった朴是春が作曲し、同社で売り出し中の歌手であった南仁樹の歌唱により、昭和13年にテイチク系列のオーケーレコードから発売されました。

「私が影響を受けたのは古賀政男さんです。古賀メロディが韓国にはいってきて、当時の青年のあいだにギターを流行させた。私の処女作『哀愁のセレナーデ』(原文ママ)は、ギターの爪弾きを入れたところが、『酒は涙か溜息か』のように多くの人たちの心を揺さぶる一つの要素になったのだと思います」(森彰英『演歌の海峡』昭和56年3月、39頁より引用)と、朴是春は当時を振り返っています。

さて、写真は筆者所蔵の同曲レコードですが、レーベルでは日本語の「の」に相当する文字が、「以」の漢字になっています。曲のカテゴリーは「流行歌」とあります。

もともと盤質が悪い上に、盤面のスレも多いこの『哀愁以小夜曲』盤をプレーヤーで再生してみると、まるで嵐の中から歌声が聴こえてくるようでしたが、幸い針飛びもなく、最後までちゃんと聴くことができました。

のちに南仁樹がオーケーで吹き込んだ『 釜山港』や『 西敀浦七十里』(ともに別項で紹介)と比べると、南の声がやや若いのと、比較的あっさりした歌い方だなぁという印象でした。

レーベルのタイプや盤質から判断して、昭和13年の発売当時の盤ではなく、昭和15年以降の時期に再プレスした盤ではないかと思われます。ちなみに、裏面の曲は女性歌手の張世貞の流行歌です。

レコードは発売当時、凄まじい売れ行きであったといい、売り切れになったレコードを求めるため、レコード会社の旅館には、全鮮からレコード商が寝泊まりして待ったといわれているそうです(朴燦鎬『韓国歌謡史1895-1945』昭和62年9月、224頁)。

この曲の作詞者は李扶風という人です。李は、日本の敗戦後に韓国で朴是春(作・編曲)、南仁樹(歌)と組み、『가거라三八線』(「去れ三八線」/コリアレコード)を1947年にリリースしています。

(平成24年7月16日稿)

ふろあ


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