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戦前の朝鮮流行歌レコード

『서울노래 』


(直訳:ソウルの歌)
(コロムビア40508/蔡奎燁) 

SPレコード

歌唱者は蔡奎燁です。曲は哀愁味のあるワルツの調べで、蔡が切々と歌い上げているのですが、古賀メロディの『술은 눈물일가 한숨이랄가』(『酒は涙か溜息か』)とはまた違った雰囲気があります。作曲は安一波となっています。編曲は、戦前から昭和20年代にかけてコロムビアでアレンジャーとして活躍した仁木他喜雄です。

作詞は趙鳴岩で、レーベルには曲名の上に小さく「東亜日報当選歌詞」とあり、その下に「改作」と表記があります。朝鮮語がわからない私には歌詞はチンプンカンプンですが、唯一「アリ~ラン」という言葉が入っているのだけはわかりました(笑)。

戦前の朝鮮における50年間にわたる歌謡の流れを体系的にまとめた『韓国歌謡史1895-1945』(朴燦鎬著、昭和62年)という本があります。当時の朝鮮譜SP盤や新聞の新譜広告などを基に丹念に調べた実証的な歌謡史研究となっています。同書の「アジアの風よ、ソウルの夢を醒ませ-発禁レコードと改詞の系譜」の項に、このレコードが紹介されていました。

それによると、東亜日報が昭和9年1月の新春文芸欄で募集した流行歌の当選作がこの曲で、タイトルは『ソウルの歌』。コロムビアから同年5月に新譜で発売されたということです。

「漢陽城の旧址に 春の歌しみこみ ナグネの心にも 歌が聞こえます
 漢江の青い水 黙して流れる 半万年流れ来た ソウルの夢なりしや
 夜の街ソウルの街 ネオンきらめく 街路樹の青葉に 歌もアリラン
 花咲く漢陽城 葉開くソウルの街 南山に浮く雲は ソウルの魂か」
(『韓国歌謡史』より引用)

ところが、当初東亜日報紙上で発表された当選詞は、「漢陽城の旧址に むかし恋しや 無窮花に枝ごと 花が散ります」(1番)、「漢江の清流に 五百年の夢眠る 南山の烽火も 消えて久しく」(2番)で、5、6番もあり、6番は「花咲く三千里 葉開くソウルの街 アジアの風よ ソウルの夢を醒ませ」であったそうです。

さらに、同書が引用している1973年(昭和48年)に東亜日報連載の半世紀の演芸界を綴った記事によると、2番の「南山の烽火も 消えて久しく」は民族運動の息遣いが、6番の「アジアの風よ ソウルの夢を醒ませ」という詞などが革命の煽動を想起させるとして、レコード発売後一週間に満たずに発禁処分になったとのことです。

レーベルに「改作」と表記があるのが前から気になっていましたが、いずれにしても、詞が改訂された上でコロムビアから発売されたことだけは確かなようです。

ふろあ


ふろあ (戦前の朝鮮流行歌レコード)
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