戦前に活躍した朝鮮の女性歌手、羅仙嬌(夏目芙美子)による朝鮮譜の一枚です。
この流行歌盤を聴いて気づくのは、東京・葭町の芸者だった勝太郎(小唄勝太郎)
が、昭和8年にビクターで吹き込み大ヒットした『島の娘』(長田幹彦作詞、佐々木
俊一作曲)と曲が大変似ていることです。多少マーチング調になっています。
メロディといい、高音での「ハァー」という歌い出しといい勝太郎とそっくり
です。
作曲者は李春風、作詞者は白雲となっています。裏面は羅仙嬌の新民謡で、こちらが
A面扱いで曲・詞の担当者名も同じです。
コーライ(高麗)レーベルは、大阪のマイナーレーベルのコッカレコードがプレスし
た朝鮮市場向けのレーベルと思われます(詳しい方、ご教示下さい)。
コッカは国歌
レコード製作所として昭和4年頃設立、のちにコッカレコードに改称し、同14年頃ま
で存続していた会社と推定されています。
この曲は、『島の娘』と作曲者、レコード会社がまったく異なるので、カバー曲では
ありません。コッカは、他のレコード会社でヒットした流行歌と類似した曲名や内容
の歌を制作し、廉価で発売していた後追い商法の会社としての側面があり、『島の
娘』との類似点を考えると、この盤もさも有りなんと思われます。
羅仙嬌は高音の美声歌手で、キングレコードで日本語の流行歌を昭和13年から15年ま
で「夏目芙美子」名義で、同16年に「羅仙嬌」名義で十数曲を吹き込み、内地の歌謡
界でも活躍しています。
ふろあ
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