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戦前の朝鮮流行歌レコード

『 釜山港 』


     (オーケー20006/南仁樹)

SPレコード 「曲名に釜山が入っているので、ヒットはしていないと思いますが入れてみました」と、当初このページで記していたのですが、この『釜山港』というレコードは、メロディや歌詞の訳などから、南仁樹のヒット曲であり戦前歌謡の傑作とされている『泣いて別れた釜山港』(または『泣いて数えるは釜山港』)というタイトルの曲と、まったく同一曲であることが判りました。

メロディについては、現代の韓国のテレビ歌謡番組(「You Tube」映像)でも、『泣いて・・・』の曲と同じものが歌われておりました。歌の訳詞については、写真のSP盤から録音したデジタル音源を、けい様が九州産業大学の韓国語の先生に問い合わせて下さったところ、日本語訳は次のようになるとのことでした。

(1番)
泣きながら別れた 釜山港を振りかえれば
連絡線の欄干先に浮かび上がる月明かり
別ればかりはつらいよ 別ればかりは悲しいもの
まして慣れ親しんだ人ならば
ウーン   (ハミングの声)

(2番)
月明かりの夜 荒海波高く
釜山港かげもない 黒い水平線
別ればかりは無情だな 別ればかりは薄情なものだったよ
まして遠い日の人ならば

これは、巷間で発表されている『泣いて別れた釜山港』(または『泣いて数えるは釜山港』)の訳詞と同じ意味でした。ではなぜ、レコードは漢字三文字の『釜山港』であるのに、今に伝わる歌はぜ『泣いて・・・』となっているのかはよく判りません。

さて、この『釜山港』のレコードは、戦時下の昭和15年頃に発売され、レーベルには記載はないものの、作詞は趙鳴岩、作曲は朴是春であることもはっきりしました。朴是春は戦前のオーケーレコードで、孫朴人、金海松らとともに大きな足跡を残している作曲家です。

朴は「韓国の古賀政男」ともいわれたそうですが、『釜山港』の曲調も、古賀メロディの『酒は涙か溜息か』や『湯の町エレジー』(戦後曲)と同様、哀愁味のあるギターの爪弾き演奏の中、小節を効かせた南仁樹の繊細な歌声が絡み、聴かせるエレジー歌謡になっていると思います。

この曲での南仁樹の歌声は、日本の歌謡界で活躍した歌手・小畑実や瀬川伸に似ています。歌唱に滲む「こってり感」は、当時の流行歌手のそれというより、現代の演歌にやや近い感じです。

(2012年2月改稿/歌の日本語訳でご協力いただきました、九州産業大学の韓国語の先生と、けい様に御礼を申し上げます)。

ふろあ


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